クレジットカードと支払停止の抗弁

クレジットカードを使用した取引にあたり、
商品の未納等のトラブルが発生した場合には、
支払い停止の抗弁権』を主張することができます。

クレジットカードと支払停止の抗弁

AさんがB店と100万円の家具の売買契約をしました。そして代金の支払はC社のクレジットカードを使用した分割払いとしました。
ところが、商品の引渡しを受ける前にB点が倒産してしまい、連絡が取れなくなりました。
Aさんは、代金の支払いをしなければならないのでしょうか?

このような場合、AさんはC社からの支払請求を拒むことができます。

この権利を『支払い停止の抗弁権』と言います。また、C社に対し抗弁権を行使することを「抗弁の接続」と呼ぶこともあります。

この項では、『支払い停止の抗弁権』がどのような性質の権利なのか、またどのような場合に権利を行使できるのかご紹介します。

同時履行の抗弁権

「支払停止の抗弁」の話を始める前に、そのベースになる権利の話から入った方がわかりやすいかと思います。

まずは民法の基礎知識から、民法には「同時履行の抗弁権」という権利が規定されています。

民法の条文中に登場する「双務契約」というのは、契約の当事者の双方がお互いに権利を得て、義務を負う契約の事を意味します。

売買契約がその典型です、商品の売主は商品を引き渡す義務を負う換わりに、代金を受け取る権利を得ることになります。

逆に商品の買主は商品を受け取る権利を得る換わりに、代金を支払う義務を負います。

例えば、AさんがB商店でテレビを購入したとしましょう。 商品は1週間後にAさんの自宅まで配達し、代金は商品の引渡しと引き換えに受け取る約束をしたとします。1週間後、何らかの事情により、B商店は商品を用意できずAさんの自宅に届けることができなかったとします。ところがB商店は、商品を持ってこないのに代金の請求をします。

Aさんは「ふざけんな!商品も持ってこないで誰が金だけ払うかこのボケ!金が欲しければ商品持って来い!」と言って、代金の支払を拒むことができるわけです。これが「同時履行の抗弁権」です。

支払停止の抗弁権

さて、Aさんは、この代金支払にC社発行のクレジットカードを使ったとしましょうか。

やはり同じように、テレビを購入してして1週間後に商品を受け取る約束をしていたとします。 ところが1週間どころか1ヶ月たってもB商店が商品を持ってこないわけです。

ですが、商品は受け取っていないのに、C社からは立替払金の請求がきます。 Aさんは、先ほどの2当事者間の契約のように、「同時履行の抗弁権」を主張してC社からの支払請求を拒む事ができるでしょうか?

困ったことに、契約の当事者が3者になった途端、「同時履行の抗弁権」の規定は使えなくなります。

何故かって? クレジットを利用した取引は、双務契約ではないからです。

AさんはB商店に対しては権利を得ますが、代金を支払う義務を負うことになるのはC社に対してだからです。

しかし、2当事者間の売買契約では主張できたことが、契約の当事者が3者になった途端、主張できなくなるのは、Aさんにとってはとても不条理な結果です。

Aさんは、「こんなことになるなら、クレジットなんか2度と使うかボケ!」と思うことでしょう。 これではC社にとっても客を失うことになるのでやはり不条理です。第一、こんなB商店のやり得を許してしまうようなシステムでは、クレジットカードの利用客を増やすことができません。

そこで登場するのが冒頭でご紹介した『支払停止の抗弁権』です。 この権利のおかげで、AさんはC社に対して「ふざけんな!商品も持ってこないで誰が金だけ払うかこのボケ!金払うのは商品を受取ってからだ!」と言えるようになるわけです。

2当事者間の取引では主張できた事を、3当事者間の取引にも言えるように「同時履行の抗弁権」の範囲を拡大した様なイメージでしょうか。

この規定は民法には無く、割賦販売法という法律でわざわざ設けた規定です。

支払を拒否できる理由にはどのようなものがあるか

支払停止の抗弁権は、民法の「同時履行の抗弁権」がベースになったよ、と言う話をしました。

「商品を引き渡さないのに誰が金払うかボケ!」ってクレジット会社に対しても言えるよって事です。

実はこの「抗弁事由」、つまり「金払うかボケ!」っていう原因になった事は、商品の引渡しが無いということに限定しないのです。

別の理由でも「誰が金払うかボケ!」 って言えるわけです。

例えば 「キャッチに捕まって買えって脅された、そんな契約無効だ!」 とかの理由でもいいわけです。

このことを割賦販売法の条文はこのように表現しています。

割賦購入あつせん関係販売業者又は当該指定役務の提供につきそれを提供する割賦購入あつせん関係役務提供事業者に対して生じている事由をもつて、当該支払の請求をする割賦購入あつせん業者に対抗することができる。

ここで使われている対抗という用語は支払い停止の抗弁権を行使するという意味です。

なお旧・通商産業省(現・経済産業省)は通達の中で、対抗の事由として次のような具体例を示しています。

(ア) 販売業者に債務不履行等があること 

  1. 商品の引渡しがないこと
  2. 見本・カタログ等によって提示された商品と現に引渡された商品が違うこと
  3. 商品に明らかな暇庇があること
  4. 商品の引渡しが遅れたため,商品購入の目的が達せられなかったこと
  5. 商品の販売の条件となっている役務の提供がないこと
  6. その他販売業者に債務不履行があること

(イ)売買契約が成立していない場合,無効である場合又は取消しうる場合であること

ただし、売買契約が購入者にとって商行為である場合及び購入者の支払総額(1契約に含まれる商品の支払総額の合計)が4万円(リボルビング方式においては, 現金販売価格(1契約に含まれる商品の現金販売価格の合計)が3万8,000円)に満たない場合には,購入者は法第30条の4に基づいて対抗を行うことはできない。

また、販売業者に対して生じている事由が存する場合であっても、その事由をもって、購入者があっせん業者に対して支払を停止することが信義に反すると認わられる場合には、対抗を行うことができないと解する。

クレジット会社に対し、支払い停止の抗弁権の行使ができるのは何時か?

カード会員は、販売店との間でトラブルが発生したとき、クレジットカード会社からの支払の請求を待たずに、直ちにクレジットカード会社に対し支払を行わない旨を申し出ることができます。

支払い停止の内容

支払い停止の抗弁権の行使は、クレジットカード会社からの支払請求に対し、その支払を拒否することができます。

ただし、クレジットカード会社に対して、既に支払った分の金銭を返すよう請求することはできません。

また、代わりの商品の要求、傷のある商品の補修請求、販売業者から受けた損害の賠償請求など支払の拒否以外の権利の行使は,販売業者対して行うべきであるとされ、これらをクレジットカード会社に要求することはできません。

クレジットカード会社に対し支払を拒否することができる対象は?

支払が拒否できるのは、販売店との間で問題が発生している商品に関係する代金の支払請求(当該支払分の遅滞から生じた遅延損害金の支払請求を含む。)に対してです。トラブルが発生している商品以外の商品の代金に対して、支払請求を拒むことはできません。

支払い停止の手続

クレジット会社に対し、支払停止の抗弁権を行使とは、概ね次のような手続きになります。

カード会員は、クレジット会社に対抗するときは、販売店との間でトラブルの発生した商品の代金の支払分の支払を停止する意思をクレジット会社に対し申し出るものとする。 なお、支払停止の申出をした場合は,その後の支払分の請求の時期ごとに改めて申出を行う必要はない。

カード会員は、上記の申出をするときは、あらかじめトラブル発生原因の解消のため、販売業者と交渉を行うよう努めるものとする。

また,カード会員は、クレジット会社の求めに応じて、トラブルの内容、商品名、販売業者名等を記載した書面をクレジット会社に対し速やかに提出するよう努めるものとする。

クレジット会社は、カード会員から支払を停止する旨の申出を受けたときは、直ちに販売店への連絡、トラブルの内容等を記載すべき書面の購入者への送付又は問題となっている商品に関する支払請求の停止など所要の手続をとるよう指導されている。

なお、クレジット会社は、カード会員との約定支払方法が金融機関の自動引落しの場合には、カード会員からの求めに応じて、販売店とのトラブルが解消されるまでの間、問題となっている商品について支払方法を他の方法に変更する等所要の措置を講ずるものとする。

クレジット会社は、提出された書面等に基づき、トラブルの内容等につき必要な調査を行うものとする。この場合、カード会員はクレジット会社のからの求めに応じて、その調査に対し協力するものとする。

クレジット会社は、調査の結果、カード会員と販売店との間にトラブルが存在すると認めたときは、その問題が解消されるまでの間、トラブルになっている商品代金のの支払請求を停止(当該対抗事由の解消が不可能であることが明らかになったときは、支払請求を中止)するものとする。

なお,販売店との間のトラブルが解消されたときは、問題の商品にの代金の支払請求が再開されるものとする。

クレジット会社は、調査の結果トラブルの原因が存在すると認めた場合であって、金融機関の自動引落しの約定により対抗の申出が行われた日以降当該商品に係る代金の支払分の引落しが行われたときは、当該支払分を購入者に対し返還するものとする。

注意事項

クレジットカード取引決済で支払い停止の抗弁権が認められるのは、分割払いの場合またはリボルビング払いの場合です。

一括払いで決済した場合は、割賦販売法の適用がありませんのでご注意ください。


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