クレジットカードの利用にあたって、名義貸しや
名板貸しが行われた場合の法律関係はどのように
なるのでしょうか?
クレジットカード会員が自分の意思で第三者に貸した場合、その第三者にクレジットカードを使用され、その利用代金を請求される事があります。
クレジットカードの会員規約では、会員は、クレジット会社所有のカードを貸与されるとしています。
また、クレジットカードは会員本人のみが使用でき、他人に貸与することや、質入れすること、譲渡することなどができないとしています。
ですから、クレジットカードを他人に貸した場合には、規約違反となります。
ただし、規約違反があったということだけで、クレジットカード保有者の支払責任を認めることは困難です。
しかし、他人にクレジットカードを利用させるつもりで、クレジットカードを貸したのであれば、会員本人の責任は発生します。
過去に、ショッピングクレジット(個品割賦購入あっせん)で、買主として名義を貸与した者の責任について問題が多数発生し、裁判例も数多くあります。
クレジットカードを用いた取引にも、ショッピングクレジットと同様の考え方がとられるので、次にショッピングクレジットにおける裁判例を紹介しましょう。
割賦購入あっせんでは、信販会社は購入者の買った商品の代金を、購入者に代わって販売業者に支払います(立替払い)。
信販会社は、このとき、商品が現実に引き渡されているのかどうか、買主が本当に本人であるのかなどについて、直接出向いていって確認するとか、本人と面談をするなどの手続きをとることはありません。
通常は、買主と思われる人に対して、電話で事実を確認するのみです。
ですから、友人の善意を悪用しようとする輩が販売業者から商品を手に入れたり、資金繰りに困った販売業者が、売買契約を仮装して信販会社から代金相当額の支払いを受ける、といった事例が発生します。
これらの場合、「名義貸し」として問題となります。
広い意味での名義貸しは、名義冒用を含むものとして使われる場合がありますから、まずこれについて考えてみます。
名義冒用は、他人の名前を本人に無断で勝手に使ってしまうことです。
名前を使われた方は、契約をする意思をまったく欠いていますから、本人について契約の効力を問題にする余地はないのです。
つまり、本人にとって契約は不成立ですから、契約から生じる責任を負担する必要もありません。
たとえば、販売業者があらかじめ勝手に、Bさん名義の三文判を押したクレジット契約書を作成し、そのうえでBさんに商品の購入を勧誘したところ断られてしまったのですが、その後、販売業者がこの契約書を利用し、これを信販会社に送り立替払金を受け取ったという事例があります。
前述の説明でもわかるように、この事例では、Bさんに契約の意思がまったくないわけですから、Bさんの契約は不成立です。
判決もこのように考えています。
また、販売業者が断りもなく親戚や友人の名前を使って架空の契約を結び、信販会社から立替払金を手に入れていたという事例で、信販会社は名前を無断で使われた人に対して代金請求はできないとする判決があります。
このような、判例の立場は、クレジットカード取引でも、妥当する考え方であるといえるでしょう。
問題となるのは、本人が自分の名前を使うことを一応承諾している場合の本人の責任です。
例えば、BさんからAさんに対し、商品を買ってもらうよう依頼があり、Aさんは自己の名前で販売店と取引を行い、信販会社への支払いもAさんが行い、商品はAさんからBさんに引き渡され、あとでBさんがAさんに対し代金相当額を支払うというような場合を考えて見ましょう。
この場合はAさんの契約として有効に成立します。
Aさんには契約を成立させる意思があるからです。
つまり、他人に自分の名前を使って取引することを許した者は、自分が取引の主体として法律上の権利義務を取得する地位につくことを承認していることになり、その取引の結果だけを、名前を借りた者に帰属させる意思があるとみられます。
では、この場合はどうでしょうか?
個人所業主であるBさんが同業者であるCさんに対し、自己の商号を使うことを許しました。
この後、CさんがBさんの商号を使い、販売業者から商品を買い、信販会社にはCさんが代金を支払いました。
この様な場合、Cさんは購入者として責任を負い、Bさんも「名板貸し」としてCさんと連帯して責任を負います(商法23条)。
つまり、もし、Cさんが代金を払わなければ、Bさんが払う責任を負うことになるのです。
この点も、クレジットカード取引に適用される考え方でしょう。
クレジットカードを用いた取引で問題となるのは、金融業者の要求により、金銭借入れの担保として提供したり、漫然と他人に貸したカードが第三者に利用された場合の責任です。
この場合、事情によっては盗難カードと同じように考えることができますが、通常は支払責任を負うことになります。
以上の事例は、買主レベルでの名前の貸借ですから、契約の成立については、名前を貸した人との間で成立するのか、借りた人との間で成立するのか、双方であるのかの問題があるだけであり、あとは通常の契約法にもとづく処理だけをすればよいのです。
ところが、名前を貸すことが、販売業者や信販会社と関連して生じる場合には問題があります。
名前を使うことについて一応の了解があるとしても、主に販売業者のリードのもとで名前が利用されていることがあります。
販売業者と買主の間に、それほど緊密な関係があるわけではなく、販売業者の要請があり、名前の使用を認め、信販会社からの確認の電話に話を合わせるというような場合です(名義借用)。
たとえば、Bさんが販売業者のDさんに頼まれて自分の名前を使うことを認め、DさんはBさんとの問で仮装の売買契約を行い、立替払契約もBさんの名前であり、Dさんは信販会社から仮装の売買契約から生じたBさんの債務の一括立替払い金を受け取るという場合です。
現金一括払いで商品を買った人が、販売業者から、手違いがあり、内部事情で立替払契約となったので、信販会社から電話があるので説明だけ聞いてほしいといわれ、信販会社からの電話に異議を述べなかった、という事例では、裁判所は買主の責任を認めませんでした
このとき買主の立場は、販売業者が信販会社から資金を得るための手段・道具となっているにすぎないからです。
積極的に名前の使用を認めている場合もあります。
通常は、販売業者と買主との間に共同の目的や意図がある場合で、仮装売買を行い、信販会社から立替金を受け取るというものです。
販売業者と買主との問の契約については無効となります(虚偽表示)。
問題は、信販会社に対してどうかということです。
虚偽表示の無効は善意の第三者に対抗できない(民法94条2項)ことからすれば、簡単に肯定できそうです。
しかし、信販会社は販売業者と加盟店契約などを結んでおり、第三者というのには問題があります。
ただし、買主が販売業者と共謀して信販会社をだまそうとしたのであれば、信義則違反などを理由として、買主は、信販会社からの支払請求を拒否できないということになるでしょう。
以上をまとめてみると、つぎのようになります。
まず、友人などに頼まれて名前を貸した場合には、販売業者などに対して、支払いを拒絶する事由が発生していませんから、信販会社に対して抗弁を主張することができません。
また、販売業者の依頼などにより虚構の当事者となった場合にも、名義借用の程度にもよりますが、単なる道具、手段として名前を利用されたのであればともかく、そうでなければ支払いを拒否することができないということになります。
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